インタビュー:茶房 森彦(Morihiko/モリヒコ)オーナー・市川草介さん

「お店にきて『落ち着く』と言ってくれること一番嬉しい。森彦のできることはそういう場所や時間を提供することです。」とおっしゃる森彦のオーナー・市川草介さん。


今年で5年を迎える森彦。
オーナーの市川草介さんに森彦ついてお話を伺いました。

森彦をはじめたきっかけは?

東京で学生時代を過ごし、デザイン事務所を立ち上げるために札幌に戻ってきたのは10年前。
オフィスを円山に構えた時に、まだあちこちに点在する木造の民家を見て、いつかここで古いものを生かしたカフェができたら…という考えをあたためていたそうです。

「事務所を森彦から徒歩1分のところに開きました。偶然通った道で古くて小さな民家を見つけた時、こんな建物でカフェができたらな、と思ったんです。
それと、当時は通いたくなるようなカフェがまだなかったのもあって、ないなら自分で作ろうと思ったのが直接のきっかけですね。
そう思っていたある時、借家の張り紙を見つけてすぐに契約をしました。ほんとに偶然でタイミングが良かったと今でも思っています(笑)」

そこから、築50年以上経った古い民家が森彦として生まれ変わります。

廃材を利用したこの建物は、梁にはあちこち接木してあったりと手直ししないと使えない。
そこでプロには一切頼まず、3年をかけて仲間や家族と少しずつ手を入れていったそうです。

お店の名前、森彦の由来は?

「円山・北海道神宮の森の近くに店があること、私自身が森を好きなこともあって、お客さんに木造のこの家を小さな森を散歩するような気分で利用してもらえたらと 思ってつけました。」

実は、以前この場所に住まわれていた老夫婦のお名前も森さんで、今でも間違って訪ねてくる方も時々いらっしゃるとか…。

森彦のコンセプトとは?

「真鍮や木、板ガラス…昭和初期に作られたこの家のものは、機械では作ることのない微妙な歪みを持っています。

私にとってこの家は心休まる時間を過ごせる空間。
古き良きものが少ないこの時代だから、時間を吸収してきたこの空間に、世代や性別に関係なく安らぎを感じてほしい。」

「世の中にカフェはなくてもいい。

でも実際に人々が利用してここに存在している。

喫茶店とは映画のようなもの。

店名が題名であり、インテリアが舞台装置であり、流れる音楽がテーマ曲であり、お客さんが俳優や女優であり、そしてオーナーが映画監督である。

カフェはオーナーが好きに作った空間だけど、そこからカフェの全てを感じたい。」


これからの予定は?

「森彦は今、土に還ろうとしているところです。

建物もいつまで持つかは分からないけど、ケアしてあげて1年でも多くやっていけたらと思う。将来は気に入った場所で、また北海道の古い建物を利用して何店舗かカフェをやってみたいとも思っています。

森彦は自分から自己紹介はしません。それは他の人がその人の言葉で紹介してくれるほうが森彦の雰囲気をうまく捉えているから。」

最後に、市川さんにご自身のこともちょっと伺ってみました。


―よく行くところはどこですか?

「渓流釣りが好きなので人工物のないところへ。
目を閉じて心に浮かぶランドスケープは、秋口になると川底いっぱいがブナの葉で覆われる、北桧山のマコマナイ川。景色に惚れています。」

―最近読んでお気に入りの本は?

「『完訳 釣魚大全』アイザック・ウォルトン 森秀人 訳解説。

フライフィッシングについて書かれた本はいくつもあるけれど、1653年に書かれていながら、釣りに関するありとあらゆる知識から、テクニックではない釣り人の精神性についてまで深く掘り下げられているこの本は、何度読んでも新しい発見があります。」

この本は1階のテーブルに、さりげなくディスプレイされています。

―最近流行っていることは何ですか?

「生まれて3ヶ月の子猫の子育てをすること。今一番幸せな時間はこれですね。」
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今も昔もカフェ好きです」とおっしゃる市川さん。
森彦を慈しむあたたかなまなざしを、お話の中で何度も見受けました。

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最終更新日: 2002-07-20

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